今回は、インボイス制度を機に「課税事業者」となり消費税を納める義務を負うことになった個人事業主の皆様へ、納税のポイントをお伝えしたいと思います。
消費税を納める時期はいつ?
課税事業者は、課税期間ごとにその課税期間の終了の日の翌日から2 か月以内(個人事業者の12月31日の属する課税期間は翌年3月31 日まで)に、納税地の所轄税務署長に消費税の確定申告書を提出し、納付しなければなりません。
個人事業者の課税期間は、1月1 日から12 月31 日までの期間となりますが、適格請求書発行事業者の登録を機に課税事業者となった場合は、今回はインボイスの登録日から12月31 日までとなります。
これまで免税事業者だった皆様は、今回が初めての消費税の申告と納税(又は還付※)となりますね。それでは、消費税はいったいいくら納めなくてはならないでしょうか。
※経費が多かった場合、消費税は還付となり、納める必要はありません。
納税する消費税額はいくらになるの?
納める消費税の金額は、次のようなルールがあります。
② 簡易課税:納税額 = 売上税額 -(売上税額 × みなし仕入率●%)
③ 本則課税:納税額 = 売上税額 - 仕入税額
これまでの「簡易課税」「本則課税」に加え、今回新たに「2 割特例」という特例※が入り、計算方法は3つのうちのどれか1つを選択します。
※免税事業者がインボイス制度に対応するために課税事業者になる場合、軽減措置として消費税の納税額を売上税額の2割とする特例が設定されています。
売上税額から仕入税額を引く、というのが③の「本則課税」の計算方法になりますが、ではこの仕入税額(仕入税額控除)とは何を指すのでしょうか。
(2)原材料等の購入
(3)機械や建物のほか、車両や器具備品等の事業用資産の購入又は賃借
(4)広告宣伝費、厚生費、接待交際費、通信費、水道光熱費などの支払
(5)事務用品、消耗品、新聞図書などの購入
(6)修繕費
(7)外注費
上記のものに係わる消費税を売上の消費税から引いたものを、消費税の納税額として最終的に税務署に納めなければなりません。加工賃や人材派遣料、警備や清掃の外部委託料など、事業者が行う労働やサービス提供の対価は消費税の課税対象となります。また、給与の支払はこれに含まれません。
美容業のみなし仕入率は何パーセント?
②「簡易課税」のみなし仕入率とは、業種ごとに割合が異なります。
美容業の売上は「技術売上(美容室ではカットやカラーリングなど)」とシャンプーや化粧品などの「店販品」の2つに区分することができます。 技術売上は、みなし仕入率が50%、店販品のみなし仕入率は80%です。
※特に申告をしなければ、売上の多い方で計算されますので、技術売上のみなし仕入率50%で全ての売上を計算することになります。
上記の3 通りの方法で納税額を計算してみます。
売上高:1000 万円(消費税10%= 100万円)
仕入その他:仕入(材料・店販)150 万円、機器などのリース料100万円、家賃120 万円、その他広告費などの経費200 万円(消費税合計= 57万円)
①「2割特例」で計算すると・・・100万円 × 20% = 20万円
②「簡易課税」で計算すると・・・100万円 × 50% = 50万円
③「本則課税」で計算すると・・・100万円 -(上記「仕入その他」の消費税57 万円)= 43万円
この中で最も納める消費税が少ないのは①の「2割特例」を採用した場合ということになりますね。もっとも、店舗によって機器リース料や家賃などは異なってきますので、絶対に①が良い、ということではありません。
(参考:国税庁ホームページ「No.6505 簡易課税制度」2023年10月1日)
「2割特例」はいつまで利用できる?
2 割特例は、インボイス制度を機に免税事業者からインボイス発行事業者として課税事業者になられた方が対象です。インボイス制度導入の2023年10月1 日から適格請求書発行事業者に登録された場合、2 割特例を利用できるのは、2023年分(10月から12 月分)の申告から2026年分の申告までとなります。
3つの課税についてはここではざっくりとご案内しましたが、詳しくは顧問税理士さんにご相談ください。